古代中国箚記

古代中国の文章・文物・歴史・研究について。とりあえず漢文(古典漢語)や漢字について徒然なるままに、また学会覚書、購書記録なども記していきます。

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漢字の異体字字典>「獨」の異体字に寄せて

最近は、南北朝~唐代にかけて、墓誌などが大量に出土しているが、石刻資料といえば、やはり後漢代のものが多い。出土資料を読む際にも、役立つことがある。

8月上旬に、石刻資料の文字(隷書が主体)を収録した字書を買った。

・(宋)劉球『隷韻』中華書局、2003年。
 漢代以降の石刻資料に見える隷書を韻ごと文字ごとに集めた、いわば文字姿の字典。巻末に四角号碼索引つき。この三書の中では一番いいような感じがする。
・(清)顧藹吉『隷辨』中華書局、2003年。
 同上。巻末に総画索引つき。
・翟云升『隷篇』中華書局、2003年。
 これは部首別に字を収録。トレースした感じに載せている。

いずれも、中華書局の「古代字書輯刊」シリーズで、1980年代に出版した再版もの。

漢代の文字資料や石刻資料を実際に読むと、さまざまな異体字に出くわす。だいたいは、釈文されたものを読むのだが、やはり厳密に資料を読み込む必要がある場合は、その釈読作業から見直すさないといけない時もあるので、いろいろと手間がかかる。そこで、いい字典を買っておく、ということになる^^;

石刻資料の異体字は、
・秦公『碑別字新編』文物出版社、1985年。
・羅振鋆・羅振玉(北川博邦:編)『偏類碑別字』雄山閣、1975年。
があり、だいたい漢代の石刻資料を読む場合は、これで事足りることがほとんどだ。

さらに、
・梅原清山『北魏楷書字典』二玄社、2003年。
・梅原清山『唐楷書字典』二玄社、1994年。
も、石刻資料も使って編纂されているので、字体を確認するときは非常に便利。
たとえば「裔」という字は、北魏の時代では、上が「商」下が「衣」という字形が主流だったということが分かったりする(分かったところでどうということもないのだが//汗)

また、漢~魏晋の木簡の肉筆資料から文字を抜き出した、
・佐野光一『木簡字典』雄山閣出版、1985年。
は、漢代の主要な簡牘の文字を収録していて類例も多く載せているし、さらには「隷辨」の字形もあわせて載せているので、非常にすぐれた工具書で、年中お世話になっている。高いけれども、出土資料を扱う人なら持っておいて全く損はない。
・陸錫興『漢代簡牘草字編』上海書画出版社、1989年。
も、漢代(やそれ以降)の崩し字の字体を確認するのには参考にできる。

で、今までは、こうした本があればかなり事足りると考えていたし、実際、漢代から南北朝の字体に関しては、ほとんどの場合は解決できていた。


数ヶ月前、後漢代の出土資料を読んでいたときに、

         ←「今昔文字鏡」フォントを借用しております

という字に出くわした。釈文では「獨」とされていた。
偏と旁の位置が違うのは甲骨文字時代からよくあることで(たとえば甲骨文字ではないけれど、「蘇」と「蘓」とか。)、この釈読自体は誤りではないと思ったが、初めて見る字形だったので驚いた。

今回買った3冊の本はさすがに漢代の石刻資料を対象にしているだけあって、あっさり載っていました。それ以外の上で紹介した字典の中では『木簡字典』しか、この字形を載せているものはありませんでした。漢代の石刻資料を宋代に録文して収録した『隷釈』のなかの「鄭固碑」に出ているとのこと。



最後に、以前このブログでも紹介した『大書源』を見てみました。

大書源(全4冊)大書源(全4冊)
(2007/03)
二玄社



中冊の1747頁に載っていましたが、出典は「隷辨」とだけ。間違ってはいないけど、碑名も挙げてくれると助かる。他の後漢の石刻資料は碑の名前もきちんと出ているので^^;

とにもかくにも、「」という字は、管見の限りでは、鄭固碑と自分が見た後漢の簡牘資料にしか類例がないようです。



漢代~南北朝の異体字を調べる字典には、実はまだまだたくさんあるのだけれど、ひとまずはこれで終わり(笑)。古文字を研究しているわけでもないし。でも、漢代のものについては、上に挙げた字典と、前後の時代のものを見ればだいたいいいんじゃないかな。
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テーマ:漢字 - ジャンル:学問・文化・芸術

コメント

レポートに役立ちました!
ありがとうございます!!

  • 2008/01/19(土) 21:31:27 |
  • URL |
  • Raul #-
  • [ 編集]

Raulさん
レポートに役立ったとのこと、うれしい限りです。

  • 2008/01/21(月) 21:02:21 |
  • URL |
  • 古中 #FvLIUmYM
  • [ 編集]

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