ということは、、、
買ってる本というのは、ほとんど使ってないっていうことか??
年末年始、中国で、阮元『経籍籑詁』(上・下)(中華書局・1982年発行、2006年第3次印刷)を買った。ある字ごとに、春秋~漢代くらいの古典籍につけられた注を拾ったもので、中国の古典籍を読む上で必須の工具書と定評のあるものなのだが、如何せん中国では(おそらくたびたび)絶版状態、日本でも中国書を扱う古書店などにあったが非常に高かった。学生時代に東方書店や内山書店で見たこともあったが、やはり値段が高くて、手が出なかった。
今回、ようやく購入。330元。最近の中国書は紙質・装丁もよくなり、安い!とは言えない値段ではあるが^^;
『漢語大字典』『漢語大詞典』がある今、どれほど『経籍籑詁』をひくか正直分からない。前2者の辞典をひいて分からなければ参考程度にひくことになるかなぁ。。。
学生時代、漢文を読んで漢和辞典などをひいてもいまひとつ意味がしっくりこない字が出てきたときに、「説文遊び」をしてた(笑)。『佩文韻府』遊びは検索が面倒ですぐやめちゃってたが。
「説文遊び」とは別にそういう遊びがあるわけでなく、自分で勝手に『説文解字』のいくつかの注釈を読んで、その字の意味をいろいろ調べてみていた、ということなんだけど。
『説文解字注』で段玉裁はどう言っているか、『説文通訓定声』で朱駿声はどう言ってるか、『説文解字義證』で桂馥はどう言っているか、それぞれ断句してない影印本なので、断句の練習にもなったり、古典籍の名称や注釈した人名を何となく覚えられたり、注の文章の独特なスタイルの解読も苦になくなったり、あげくにはそれぞれが引いている書籍の原文にあたって、「あ~こんな節略(引用時の省略)してるや」とか「こりゃ誤読じゃないか?」などと一人思ってみたり、、、そんな「遊び」です。
とにかく各人が意外に違う古典の記事や注を引いていて面白かった(それぞれ説文に注をした態度からすれば当然だが)。特に、『義證』はいろいろな種類の古典から類例をひっぱって(なかには漢代の碑文の例も)、この字はこんな意味もあんな意味も実はあるんだよと紹介してくれていて、発見が多かった。「漢代漢字辞典」みたいな感じかな。
『説文解字』の注には、代表的なだけでも上にあげたもののほかに、『説文解字句読』や『説文解字繋伝』などなどあるけれど、買えなかったので、「説文遊び」には使っていなかった。あの頃も、丁福保『説文解字詁林』があればどんなにいいだろうと思ってた(が、これは本当に大部で買えない^^; 今で言えばそれぞれの本を切り貼りして、『説文解字』の諸注のほぼすべて網羅したというすごい本。影印をそのまま貼り付けた編集方法がすごいな、原典を当たり直さなくてもいいし、と思ってた)。
まぁ、そんなことをしていると、あっと言う間に夜が更けてしまって、元読んでいた漢文に戻れなくなったりしていたけれど(w)。夢中になって読んでいて楽しかった。何より、その頃は時間があったなぁ・・・(遠い目)
『経籍籑詁』もせっかく買ったんだから、使ってあげなきゃ♪
『説文解字』で思い出したけど、
![]() | 説文入門 説文会 (1983/01) 大修館書店 この商品の詳細を見る |
この本は、「段注遊び」ならぬ段玉裁『説文解字注』をいかに読むか、読むべきか、段玉裁の仕掛けた謎解きを解くような感覚で読めるすごい本です。と言っても、段玉裁『説文解字注』を持っていないと全く面白くないし、僕がやった「説文遊び」とはレベルが違って、学問的に段注を読み込んでいるので、「入門」とはいえ、レベルは相応に高いです。大学のゼミで少し厳しく段注を読んでいる、そんな感じで非常に勉強になります。
段注は、その語釈や(ある意味妥当な)説文の解説書としてスタンダードで有名だけど、その裏には段玉裁の古代音の復元、古代文字の復元などさまざまな研究の蓄積があり、そうした自説を披露するための本であることを、『説文入門』を読んで初めて知りました。全編、問答形式になっているので、内容的に難しいことは難しいけれど、案外楽しく読める。
最後に『説文解字』(せつもんかいじ)の説明を少しだけ^^;
後漢の許慎が作成した字典。序の日付は永元十二年元旦、つまり西暦100年1月1日。9000余字について親字として篆書(小篆)をあげて、続いてその漢字の語釈をしている。つまり、漢字辞典ですね。普通は省略して「説文」(せつもん)と呼んでいます。
以下は私見。多くの書体字典や書道関係の字典に見える篆書は、『説文解字』からとっていると思うけれど、実は宋代に手が加わっているので、篆書の字体の正確さは疑う必要があると思う。もっとも、芸術的な鑑賞として篆書を見るのなら、そういった視点は無用だろう。
でも、こんな「遊び」をしてた人って、いないだろうなぁ・・・(笑)。