それは、于右任『標準草書』上海書店出版、1983年第1版、2006年第二十二次印刷、10.00元、という代物。
ここ数年来の個人的な夢のひとつに「崩し字・草書が読めるようになりたい、あわよくば書けるようになりたい」などという無謀な思いがあった。
まとまった時間もなければ、書道教室に通ったりする余裕もあまりなく、あるいは専門的に学ぶために書道の先生に弟子入りするほどのことではないので、独学書を日本でもいくつか買い求めて少しは30すぎの手習いでやってみたものの、やはりほとんど覚えられず(w
なんか、草書の独学書でいい本知りませんかねぇ・・・
で、とある学会で、たまたま中国人で日本で長く書道を教えている先生と少し話す機会があったので、上のような質問をぶつけてみた。
そうしたら「いろいろあるけれども、やっぱり于右任の『標準草書』がいい!でも絶版になっていて入手できない」と言われた。それ以来、昨日のブログにあげたような古書店からの目録ではいつもあるかないかチェックしていたのだが、今回の上海で見つけて、思わず2冊買ってしまった。
だって、10元だし!
1冊は練習で使い潰すし>予定は未定(w
本書(↓)を見て、なるほど先の先生が推薦するのも頷けた。

こんな感じに、左ページにお手本の草書、右ページに楷書と草書の出典が出ている。1ページの大きさは縦が26cm、横は15cmくらい。ちょっとスキャンがうまくなくて草書の部分がキレイに出てませんけれども(汗)、クリックすればよりハッキリ見えます。
多くの草書の自学書と違うよい点は、筆順が分かりやすい、本自体がコンパクトで携帯できる、草書の出典が明記されている(王羲之系か宋代以降の連綿草書か、明清のものかなどの判断もつく)ことだろうか。偏や旁だけの崩し方も載っているが、近年の草書自学書や解説書でも、偏だけ旁だけの崩し方を取りだして説明する方法は、この『標準草書』から始まったのかな、とさえ思う。
とにかく、ちょろちょろっとまずはやってみよう、という気になるし、かつ内容がしっかりしていて、おそらく勉強していっても飽きがこないというかスラスラっといけそうな感じなのだ。
もっとも、とらぬ狸の皮算用ではあるが・・・。
そういえば、厦門の南普陀寺(の奥に広がる山)に「于右任」が書いた碑銘があったなぁ。自分自身は書の芸術や美をまったく理解できない、分からないんだけど、彼の草書はなぜか野暮ったいというか、にょろにょろっと書いて終わってしまう感じがして、ちょっと稚拙な雰囲気を抱いてしまう。
でも、『標準草書』の序文を読み、その人となりに思いを馳せるに、素晴らしい人だったに違いない。なかなか感動した序文でした。
曰く、
「わたくしは中年になってから草書を学び始め、毎日僅かに一字を覚えるだけでしたが、2,3年してようやく筆をとる(草書を書く)ことができるようになりました」
など。
その他、中国の現状を憂い、国難を乗り越えようとする姿が目に浮かんでくるような文章でした。
なにはともあれ、めでたく重版されました!
良書が入手できる状況というのは、よきことなり。
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