ちょっとびっくりしました。
いや、本当にビックリしました。今まで、漢字・中国語の古代音や中古音、近代音を知るためには、さまざまな本をひっくり返さなければならず、また研究者によって復元音が違っており、そもそも日本語の資料そのものが少ないので、ほとんど知るよしもなかったのです。
わずかに、かの藤堂明保氏による辞典で、藤堂説による古代音と中古音が記載されており、上に書いたような状況なので、藤堂説(一研究者の説)とはいえおおよその音価を知るには唯一といっていいほどの辞典でした。
藤堂明保(編)『学研漢和大字典』1978年初版、学習研究社
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もちろん電子辞書にはなっていないタイプなので、漢字を探してどのように復元されているのか、調べなければなりません。
それが、今やオンラインで中国古代音・中古音・近代音、さらには現代方言音まで「検索」できてしまうとは、さすがに驚きました。
以下のサイトで、横断検索ができます。
・漢字古今音資料庫
http://xiaoxue.iis.sinica.edu.tw/ccr/
え?中国語だから分からない? いえいえ簡単です。
まず、知りたい音の漢字を「字」に入力します。
それから、上のタブになっているところで、調べたい対象(つまりいつの時代の誰の復元音/どこの方言音)を選んでいくのです。とても全部は選べないほど、豊富にあります。
選んでいくと、下にボックスが次々と現れます。調べたい対象のどこまで表示するか、さらにチェックが入れられるようになっていますが、まぁ、ここは触らなくていいでしょう。
調べたい字とデータベースを選んだら、そのまた下のボタン「確定送出」を押せば、画面の中央に結果が出ます。なんと、上古音は「高本漢」(カールグレン)「王力」「董同龢」「周法高」「李方桂」の復元音が選択可能です(もちろん全部を同時に選ぶこともできます)。隋唐中古音も「高本漢」(カールグレン)「王力」「董同龢」「周法高」とばっちり揃っています。
そして、現代の方言が…詳しすぎてどれを選べばいいか分からないくらいあります。もう圧倒されっぱなしです。
ちなみに「古」という漢字を検索してみましょう。
上古音(つまり『詩経』をもとに復元した音)
董同龢説:kɑɡ
高本漢説:ko
王力 説:ka
周法高説:kaɣ
李方桂説:kagx
中古音(つまり『広韻』をもとに復元した音)
高本漢説:kuo
王力 説:ku
董同龢説:kuo
周法高説:kuo
現代音
北京:ku 214(←第三声の調音を数字で表記している。ピンインでは「gu」だが、「ku」となっているところから見ると国際音声記号に従っているようです)
蘇州:kɜu 51(いわゆる上海語)
長沙:ku 41(←普通話の第四声。長沙方言では「古」はピンインで「gu」の四声で発音していることが分かります)
福州:ku 31(←いわゆる閩南語?)
香港:ku 35(←いわゆる広東語?)
という具合にもうびっくりです。。。当然ながら実際には本で確かめてみなければなりませんが、門外漢としてはもう十分すぎる情報量です。
「臺灣大學中國文學系、中央研究院資訊科學研究所共同開發」とありますから、共同研究・開発したものを一般にも公開したということなのでしょう。たしかに、ある漢字が誰の復元音ではどうで、他の人の復元音はこうで、時代が違うとこれこれで、、、なんてひとつひとつ本をめくって調べなければならないわけですから、こういう便利なものが欲しくなるわけです。でも、一般に公開しているのは本当にありがたいことです。
一番右には「域外譯音」がありますが、まだデータがありません。おそらく日本漢字音やハングル読みが将来入るのでしょう。それにしても、すごいデータベースです。
もう、ありがとうございます、しか言えない!!!!
ちなみにここの親サイトはやばいです!
・漢字古今字資料庫(漢字字形データベース)
http://xiaoxue.iis.sinica.edu.tw/ccdb?ccmapcode=2
で、甲骨文の字例、金文の字例、楚文字の字例、小篆の字例を出してくれる他、主要な辞典類で何巻の何頁に載っているのかも明記してくれます。『今昔文字鏡』は『大漢和辞典』の巻数と頁数だけですが、もうありがたすぎる!!!!
・小學堂甲骨文(甲骨文字データベース)
http://xiaoxue.iis.sinica.edu.tw/jiaguwen?kaiOrder=200
・金文(金文データベース)
http://xiaoxue.iis.sinica.edu.tw/jinwen?kaiOrder=200
この四月に完成・公開したとあるので、おそらく知らない人もいるでしょう。大いに自信をもって宣伝しておきますwww
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テーマ:中国語 - ジャンル:学問・文化・芸術