その学生は、高校3年間を台湾で過ごし、大学3年まで北京にいたので、いわゆる「漢文訓読法」とは無縁で、むしろ訓読法を一から勉強するのだったら、現代中国語から直接、古典漢語を読めるような訓練をした方が早いかもしれないのだ。
もちろん、中国で普通に大学生活を送っている学生は、古典漢語を読めるわけではない。私たちが普通に『源氏物語』や『枕草子』がなんとなく意味が分かるような気がしていてもきちんと現代語訳できないのと同じように。
なので、中国人のための古典漢語のテキストも存在している。
そうしたテキストでスタンダードなのは、王力『古代漢語』(全4冊)、中華書局。このテキストは非常によくできていて、これをみっちりやれば相当古典漢語が読めるようになると思う。
しかしながら、日本の訓読法による古典漢語の読解も捨てがたい。いわゆる置き字とされる助字や再読文字などの意味を正確に把握することができれば、訓読法はスタンダードな古典漢語に対しては、かなり正確に意味を把握することができる。とはいうものの、一から「漢文」を勉強する人にとってはどんな本が適しているのだろう。
「漢文」が大学の受験科目に指定されている場合、その問題文のほとんどが、訓点や返り点などが付されたものだ。つまり、漢字の音読み・訓読みができれば、送り仮名が振ってあるから、なんの問題もなく読むことができる。そして一部分だけ、訓点がつけられておらず、「ここの部分を書き下せ」などという問題が出されるのだ。
こうした「漢文」を相手にする場合は、「白文」を相手にする場合と違って、問題になっている箇所以外の訓読については全く検討する意味をなさない。いわば正解がすでにつけられているからである。
かくして「漢文」参考書や問題集、文法書(と銘打っているもの)は、いかにして正しい訓読をすべきか、練習させる。多くは、訓読を暗記させる方法で。私自身、漢文訓読法で古典漢語を読んできたので、訓読法を否定する気にはなれない。しかし、世の漢文参考書で「句法」解説書の多いことには辟易する。「文法」を論じているのではなく、「句法」(定型の訓読法)を説明しているにすぎないので、結局は暗記しないといけない、という結論に至るのである。
むろん、「古典漢語」を翻訳するためには、一定の知識は暗記しなければならないだろうが、上のような学習をしたとして、はたして「白文」が読めるようになるのだろうか。「句法」の読み方だけはできていたとしても、それだけでは「白文」は読めるようにはなるまい。
やはり、「文法」の理解が必須になると、私は思う。
古典漢語に文法はあったのか。現代中国語に文法はあるのか。答えはもちろん諾である。英語文法のようなものではないにしろ、中国語には中国語の構造・法則・「文法」はあるのだ。
では、その「文法」を解説した本があるか、というと、これがなかなか難しい・・・。
いろいろ悩んでいるうちに、学生への答えが出ないまま、今日も中国語を教えに行かなければいけない時間になってしまった。いくつか、コメントを寄せて頂いている方に返事が書けずにいて申し訳ないのだが、しばらく待っていただきたい。
スポンサーサイト
テーマ:中国古典(漢文) - ジャンル:学問・文化・芸術