2011年2月15日20时17分、治療のかいもなく不幸にして逝去された。享年100歳。天寿を全うしたと言えるだろう。
魏晋南北朝史をやっている人間で、何兹全先生の名前を知っていなければ、それはもぐりだろう。
実は、私が会ったことのある中国の大先生のうちの数少ない一人でもある。もう15年は前になろうか、襄樊で開催された諸葛亮関係の学会に、たまたま(指導教官のところに招待状が来ていたのだが、「行ってみる?」「はい、行ってみます」という流れで)出席することになり、当時は「外賓」と「一般」で接待が分かれていた時代。私は修士課程でろくに中国語も話せない分際で「外賓」の一人として食事の席やバスもご一緒することとなった。
何兹全先生の奥さんも学会にいらしていて(中国の学会では奥さん同伴は珍しいことではない。特に年配の方の場合は)、朝、会うと「你说什么?」「・・・」「你应该说早上好或者你身体好吗。」と、その頃、本当に「谢谢」「你好」に毛が生えた程度しか話せなかった若造に対しても、嫌み一つなく、丁寧に教えて下さるのだった。何兹全先生も、食事の際に、お皿から食べ物を取り分けて下さり、「若いのだから、もう少し食べなさい」と言ってくれた。当時は片田舎の襄樊に、しかも中国語も分からずに参加した若造に対しても大人な対応をしてくださり、「中国の大人(ダーレン)とはこういうものか」と感歎したことがある。
その、何兹全先生が、亡くなられた。
ご冥福をお祈りしたい。あの時よりかは中国語はうまくなった。
その学会には、林剣鳴先生も参加されていて、「君は中国史をやるなら、絶対に中国語を勉強しなければならない」と丁寧な口調で力説されていたが、目に浮かぶ。何兹全先生のお姿、あの奥さんとのやりとりは忘れられない。心の中に今でも焼き付いている。
北京師範大学・何兹全先生訃告
http://www.bnu.edu.cn/gdtz/32676.htm
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テーマ:中国史 - ジャンル:学問・文化・芸術