![]() | 荒川清秀 『体験的中国語の学び方―わたしと中国語、中国とのかかわり』 同学社、2009年 ● 中国語学習の目的は中国人のようになることか ● 留学すれば中国語がものになるわけではない ● 発音の習得に完成はない ● 参考書、辞書はケチらず買おう ● ラジオ、テレビ講座をおおいに活用しよう ● ある時期に一字一句こだわって読もう |
中でも、中国語学習者がピンインの「n」と「ng」が聞き分けられないことに関して、筆者は、聞き分けられなくても前後の文脈や四声からどちらかが分かるので、聞き分けられないことに自信をなくしてはいけない、と説く。
発音する側としては「n」と「ng」を分けて発音するにせよ、聞き取る場合は神経質にならずとも、単語力があれば問題ないということだ。
そのほかにもいくつか発音上のことが書かれており、有声音と無声音の対立だけはしっかりとマスターしなければならないと言う。さまざまな場面で筆者の経験に則ってのことだけに、説得力を持つ意見ばかりである。
そして「中国語学習の目的は中国人のように話すようになること」ではない、としている。
これは、ハッとさせられた言葉だ。ともすれば、われわれはネイティブのようになりたいと思うのだが、生れてから何千時間何千回何万時間何万回と言葉を聞き、話し、訂正された母語者には所詮かなうものではなく、外国語学習の目的はネイティブになることではなく、しっかりとした母語を基礎に違う言語体系・思想体系の言葉を理解することだというのだ。
たしかに留学すれば、日常会話にはさほど困らずには帰ってくることができる。しかし、そこからネイティブのようになることを目指すのではなく、文法的に自覚を持って学習することの大切さをも説いている。
といろいろ書き連ねたが、とにかく本書を手にして読んでみると、中国語学習には有益な本だということがすぐに分かると思う。なお、後半は、筆者がNHKラジオ中国語講座、テレビ中国語講座を担当した裏話になっている。この部分はそれほどは刺激的ではないが、舞台裏を覗き見る感覚で読めばそれなりに面白い。
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テーマ:中国語 - ジャンル:学問・文化・芸術