発行年代順にあげると、、、
1964年の加藤常賢『眞古文尚書集釋』
1976年の全釈漢文大系のひとつの池田末利『尚書』
1983年の新釈漢文大系のひとつの『書経』上
1985年の同じく『書経』下
となる。
1964年の加藤氏のものは、加藤常賢氏が偽古文の部分を除いた尚書、つまり真古文尚書の注釈本という形をとっている。
次の1976年の池田氏は、加藤常賢に学んだ学者で、偽古文も含めて『尚書』を翻訳した。
新釈漢文大系のものに作者を施さなかったのは、上巻と下巻で異なるからだ。
上巻は「加藤博士の畢生の心血を注がれた成果であるから、特にこの大系本の一冊として収めた」もので、「書き下し文は、加藤博士の訓読に従って、小野沢教授の手を煩わせた」とあるが、「序、例言及び真古文尚書解題と、「王若曰考」という論文」はすべて削除して採録していない。
また、疑義ある点や誤植などは「宇野茂彦に命じ、その責任において補修せしめた」とあるので、基本的には1964年の『眞古文尚書集釋』の再録と考えていいようだ。
下巻は小野沢精一によるもの。偽古文尚書を対象にして注釈・現代語訳がなされているが、小野沢氏は原稿を書いている間に亡くなってしまい「全篇の解説を書くに至らなかった」ため宇野精一が書くことになった、と『書経』上巻の解説にある。
そもそも名前からして『尚書』と『書経』と違う命名をされているが、これまた宇野精一氏の解説によれば、明代以降『書経』という名が出てきたが、それ以前は不明ということであった。
史記などの古典には「書曰」として引用される「書」が『尚書』であり『書経』である。
池田氏の全釈漢文大系本の「解説」の冒頭にはこうある。
『尚書』はめんどうであり、難解である。
と。その後、なにゆえに「めんどう」でなにゆえに「難解」かであるか示されるわけだが、たしかに難解な文が多いと思う。原文だけではとても読めない。せめて訳本を入手しておこうと思って、上の三種の訳本を地域図書館から借りだしてみた。
ぱらぱら読んでみると、どれが一番とはなかなか決めにくいように思えた。結局のところ、全釈と新釈の漢文大系を両方手元に置いた方がいいのかな。
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テーマ:中国史 - ジャンル:学問・文化・芸術