![]() | 桃木至朗・編 『海域アジア史研究入門』 岩波書店、2008年。 |
目次を見るだけでも面白そうなラインナップに見える。
以下、目次は、ブログ 省省流転 より転載(コピペですね)しました。
http://kohdoh.blog87.fc2.com/blog-entry-78.html
目次
総説 海域アジア史のポテンシャル(桃木至朗/山内晋次/藤田加代子/蓮田隆志)
第1篇 通時的パースペクティブ
第Ⅰ部 中世〈9 世紀―14 世紀前半〉
第1章 中国人の海上進出と海上帝国としての中国(榎本渉)
第2章 モンゴル帝国と海域アジア(四日市康博)
第3章 宋元代の海域東南アジア(深見純生)
第4章 日本列島と海域世界(山内晋次)
第Ⅱ部 近世前期〈14 世紀後半―17 世紀初頭〉
第5章 明朝の国際システムと海域世界(岡本弘道)
第6章 琉球王国の形成と展開(上里隆史)
第7章 日明の外交と貿易(伊藤幸司)
第8章 日朝多元関係の展開(関周一)
第9章 倭寇論のゆくえ(橋本雄/米谷均)
第10章 「交易の時代」の東・東南アジア(中島楽章/桃木至朗)
第11章 ヨーロッパ勢力の台頭と日本人のアジア進出(岡美穂子)
第Ⅲ部 近世後期〈17 世紀中葉―19 世紀初頭〉
第12章 経済史から見た近世後期の海域アジア(藤田加代子)
第13章 近世後期東アジアの通交管理と国際秩序(渡辺美季/杉山清彦)
第14章 蝦夷地と琉球――近世日本の2つの口(谷本晃久/深澤秋人)
第15章 東南アジアの「プロト国民国家」形成(蓮田隆志)
第16章 18世紀の東南アジアと世界経済(太田淳)
第17章 近世から近代へ――近世後期の世界システム(秋田茂)
第2篇 各論
第18章 海陸の互市貿易と国家――宋元時代を中心として(佐藤貴保/向正樹)
第19章 港市社会論――長崎と広州(川口洋平/村尾進)
第20章 貿易陶磁(坂井隆)
第21章 海産物交易――「竜涎香」をめぐって(真栄平房昭)
第22章 造船技術――列島の木造船,終焉期のけしき(出口晶子)
第23章 航海神――媽祖を中心とする東北アジアの神々(藤田明良)
第24章 漂流,漂流記,海難(劉序楓)
第25章 海域アジア史のための東アジア文献史料(渡辺佳成/飯岡直子)
和・中・韓文 文献目録
欧文 文献目録
編者あとがき
執筆者一覧
各章の分量はそれほど多くなく、非常にあっさりした印象を与える。近年の研究成果を中心に、分担執筆者が、それぞれの興味関心に従い、研究概要を重点的に解説した書といった感想を抱いた。そのため、「第1篇 通時的パースペクティブ」においても、それほど総論的な、研究を総ざらいするような紹介の仕方はしていない。もっとも研究蓄積が非常に多いであろうこういう分野の研究案内は、研究をすべて載せて解説するには向いていないだろう。利用者はその点を承知しておかなければならない。
もっともこうした傾向は、『中国歴史研究入門』 名古屋大学出版会、2005年、に顕著に見られるように、近年の研究入門書に共通する傾向で、それをもってその書の価値を論じる、貶めるべきではないだろう。むしろ、総ざらい的な研究入門を目指して頓挫するあるいは中途半端に終わるよりは、各執筆者の視点が明瞭に分かるような研究入門の方が使えるのではないかとさえ思うほどだ。
個人的に、宋代の中国と対外貿易について知りたかったのだが、目次をパッと見てそれが記載されているであろう「第3章 宋元代の海域東南アジア(深見純生)」と「第18章 海陸の互市貿易と国家―宋元時代を中心として(佐藤貴保/向正樹)」のふたつの章を読んだものの、名著『蒲寿庚の事績』さえ引かれていないようで、紙量が少なくてあまり分からない、研究の概要がいまひとつつかめなかったのは、正直残念であった。
もっとも「第1章 中国人の海上進出と海上帝国としての中国(榎本渉)」に、おおよその研究概要が出ていて、参考になり、安心した^^;。やはり研究入門書でも、つまみ食いはよくないようだ。
欧文研究もひかれており、近年の商業史研究・都市史研究・地域史研究の動向を中心に解説してあり、「海域アジア史」と銘打っている通り、日本史・朝鮮史・中国史・東南アジア史、さらにはインド史など、アジアの海上世界の歴史研究の動向を広く拾っており、研究案内としては成功している、使えるなと思った。
下記の岩波書店のページから、PDFファイルで冒頭から30ページもネットで「立ち読み」することができます。すごいですね。
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/0/0224840.html
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テーマ:中国史 - ジャンル:学問・文化・芸術