春秋戦国時代を専攻しているわけではないが、これはまったく盲点をつかれた。
春秋時代までは手づかみで、戦国時代に入ってようやく「箸」が登場する。その背景には当然なんらかの社会的な変化が想定できるが、自分自身にはちょっと見当がつかない。下記の書でも一応の説明をしているが、説得的なものになってはいないように思える。
太田昌子『箸の源流を探る―中国古代における箸使用習俗の成立』(汲古書院、2001年)
しかし、殷から魏晋までの箸について文献・考古学両面から詳しく論じているほか、第六・七章では「中国古代における食器具類と食事様式について」と題して、箸以外の食器具の変遷と食事様式(「坐る」→「座床」→「椅子」への変遷)を問題にかなり史料を集めており、自分にとって大変勉強になった。
書名が『箸の源流を探る』となっているが、『中国古代における食器具類と食事様式』としてもよいような内容だと思う。文献の解釈や歴史学的な立場からの指摘に甘さがあるように感じるが、著者が食物学者である以上は致し方がない。むしろ、食物学者から見た視点が斬新であり、また丁寧に史料を拾っている点に共感を覚えた。とりわけ箸の出土例を網羅した点には敬意を表したい。こうした地道な研究は分かりやすくかつ必要なものであると思う。
あまり中国古代関係としてとりあげられたことがない本なので、ここに記しておく。
自分の専門のことも、そうでないこともたくさん勉強しなければ。
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