大学では中国史を教えたことはないので、実質的なデビューですが、いま、講義レジュメを作っています。
今週は、2つの大学から、ようやく担当する講義の時間割が決定したとの通知をもらいました。
3月中下旬にならないと分からないということだったので、希望が通るか不安でしたが、希望通りの時間帯に決まりました。連年担当していれば、前年と同じ時間帯でだいたい決まりだと思うのでしょうけれど。
「中国史」といっても、何千年もあるわけですからたとえ1年の通年であっても、教えることはほぼ無理に近い(浅くやったとしても)のですが、ある程度通史的な授業にしたいと考えて、自分の専門でない時代も勉強しつつ、やっていくことにしました。まぁ、おおよそは分かっていますけれど。
俗に言う「歴史屋」(文献史料など文字資料を対象に歴史研究をする人)にとって、一番の鬼門はやはり「考古学」
常識も違えば、方法も違えば、、、
とにかく全く違う分野です。学問そのものが違うといっても過言ではない。
ただ、大学では「歴史」という大枠で一緒になっている(た?)ので、私は大学時代に考古学関係の講義も聴き、考古学実習もとって縄文時代の遺跡を掘ったりしました(w)
ただ、『中国の考古学』が出たときは、とびつきましたね(笑)。
こういう本が欲しかった、読みたかった、ということで。値段も手頃、なにより一般書なので、内容が概説的でありつつ専門性を保っていて、読んで理解できるのはうれしい。考古学用語だけは確認しないといけませんけれど。
本書「はじめに」にはこう書いてあります(本書、P.2 谷豊信執筆)。
とりあえずまとめてみてくださって、感謝、である(w(前略)「情報の洪水」という状況にもなっている。中国で指導的立場にある学者でも、中国考古学の全貌を把握することは難しくなってきているのが実情である。興味深く、しかし捉えがたいというのが今日の中国考古学である。
そういう状況であるからこそ、中国考古学の現状を「とりあえず」まとめてみよう、というのが本書の主旨である。無謀な試みであることは百も承知のうえである。
秦漢を専門にする自分にとってはまさに良書。考古学の論文を読むときにも、~~文化って何だっけ、という時なんかは、この本をよくひもといています。
小澤正人・谷豊信・西江清高『中国の考古学』同成社、1999年

序章 中国とその考古学
第1章 旧石器時代の中国
第2章 農耕社会の成立―新石器時代前期
第3章 農耕社会の定着―新石器時代中期
第4章 農耕社会の変容―新石器時代後期
第5章 黄河中流域における初期王朝の登場
第6章 初期王朝時代の編年と王朝交替の歴史
第7章 初期王朝時代の社会と文化
第8章 初期王朝時代の王朝周辺地域
第9章 東周(春秋・戦国)時代
第10章 秦漢時代
終章 東周秦漢文化の拡大
個人的には第1~8章がありがたいです。
「初期王朝」という語がありますが、これは、「殷より前の王朝と呼ぶべき存在」が考古学的に近年分かってきていて、これを中国では「夏」にあてています。日本でも、岡村秀典先生が一般向けの本を書かれていますね。これもこの時代のことや、「夏」王朝なんて実在するの?と思っている人には、お薦め本です。
![]() | 岡村秀典『夏王朝―王権誕生の考古学』講談社、2003年 (2003/12) 今、知りましたけど、この本、もう文庫本になっているんですね。値段があまり変わらないのがあれですけど、amazonを見たら、文庫本の方はハードカバーの内容に加えて「補論」が加えられているとのこと。買い換えるか・・・。トホホ。 → 『夏王朝 中国文明の原像』(講談社学術文庫、2007年 |
ちなみに、先の『中国の考古学』は、「世界の考古学」シリーズの1冊で、私は他に、
藤川繁彦『中央ユーラシアの考古学』同成社、1999年
早乙女雅博『朝鮮半島の考古学』同成社、2000年
を持っています。両方共に、いい本だと思います。
というか、このシリーズには欲しい本がたくさんなので、自分の備忘もかねて同成社さんの紹介・案内ページをリンクしておこう。
同成社 世界の考古学
仕事の関係で同成社さんには数回足を運びましたが、決して同成社の回し者ではありません(w
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テーマ:考古学 - ジャンル:学問・文化・芸術