もっとも、読めない箇所が出てくると、もっぱら先行研究に頼って読んでいるわけですけれども。。。
釈文されたものではなく、独自に読もうとすると、古文字学の知識がけっこう必要なことが分かりました。研究仲間に楚簡を(も)やっている人がいますが、彼が時折簡牘や古典籍を読むときに音通で解釈しようとするのがなぜだか分かった気がします。
ただ、大学院の指導教官が言っていたように、古典籍の漢文は基本的にはそのまま素直に読むのが一番で、音通は最後の最後で、まさに禁じ手のように自分は考えています。
そんな時に役に立つのは『経籍纂詁』や『説文通訓定声』などの古典的な著作とともに、『古字通仮会典』といった近人がつくった辞書ではないでしょうか。
個人的にこのような辞典を使う時に注意しているのが、「A→B」(「A」は「B」に通じている)事例があったとしても、「B→A」とは言えない、ということです。当たり前のことなのでしょうけれども、禁じ手を使う時は、できるだけ同時代の古典籍の事例を使って説明するほうが説得力があります。
現代の中国でも、あるいは日本でも、音が同じであれば誤字や当て字などありますから、古典籍を音通でもって解釈して理解するのも、特に簡牘史料などの筆写史料について言えば、そうそう悪いことではないのかもしれません。
ただ、やはり自分は、「最後の最後で禁じ手」にしています。
論文などで音通でもって解釈したことはありません(w
古文字一般については、下にあげた本が理解しやすく、かつ今でもかなり重宝する良い概説書です。
李 学勤(著)、小幡 敏行(訳)『中国古代漢字学の第一歩―古文字学入門』、 凱風社、1990年
書名に「第一歩」とあってものすごいとっつきやすそうにも思えますが、なかなか読み応えはあります。李学勤は言わずと知れた中国古代史・考古学のビッグネームです。古本であればけっこう安め(400円とか!!!)なので、青銅器とかに刻まれた漢字が好きな方にはお薦めですね。
楚簡については、歴史分野より思想分野で相当インパクトを与えたようです。
詳しくは分からないのですが(笑)、中原起源だと思われていた儒家あるいは老荘思想が戦国の楚にすでにあり、違うテキスト(要するに書籍ですね)があった、ということですから、たとえて言えば、『孟子』がまったくないと仮定して、その時に楚簡からいきなり『孟子』が出土した!、という感じなのでしょう(はずれていたらごめんなさい)。
そのあたりのことは、概説書としては次の2書が参考になるかと思います。個人的には、買っておらず本屋で立ち読みした程度なんですが、お金があればこうした時代も分野も違う本を買いたいところですね。ちなみに地元の地域図書館には両方入っています。
福田哲之 『文字の発見が歴史をゆるがす―20世紀中国出土文字資料の証言』 二玄社、2003年
amazonは、古本屋ともリンクしているので便利なのですが、書誌情報が時々間違っていたり、ほとんどに目次など内容をうかがえるものがないので、補っておきました。画像がない本ばかり紹介してます。
![]() | 中国出土文献の世界―新発見と学術の歴史 (創文社、2006年) 朱 淵清(著)、高木智見(訳) 第1章 始皇帝の焚書坑儒 第2章 孔壁書-『尚書』の謎 第3章 汲冢書-編年体『竹書紀年』 第4章 王国維の予言 第5章 地下の新材料 第6章 新出土の簡帛書籍 第7章 銀雀山漢簡-兵法と戦争 第8章 馬王堆帛書-方術の再認識 第9章 郭店楚簡-戦国時代の思想 第10章 脚光を浴びる上海博楚簡 |
『中国出土文献の世界』のほうは、guangbiさんのブログ虎渓之橋ブログにて、紹介されていますね♪
久しぶりの更新でした。。。
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