古代中国箚記

古代中国の文章・文物・歴史・研究について。とりあえず漢文(古典漢語)や漢字について徒然なるままに、また学会覚書、購書記録なども記していきます。

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漢代の法律

夏に行った時に買った本の中に、『歴代刑法考』(全四冊)がある。

沈家本『歴代刑法考』(全四冊)中華書局、2006年
http://www.frelax.com/cgilocal/getitem.cgi?db=book&ty=id&id=LDXF193770
(→書虫さんのページ)


140元(も)するので、購入を若干ためらったが、75%がけの本屋だったので、即購入決定。1985年初版の重版。最近は、基本的な書籍がつぎつぎと再版されて、入手困難だった本が買えるので、うれしい悲鳴だ。

さて、この本、中国古代から歴代の王朝の法律制度や刑法、処罰、などなどを正史や法律書の記述を主として考察したものだが、とりわけ本書の約三分の一を占める『漢律摭遺』(二十二巻)が収録されているのがうれしい。
実は買った後にパラパラ本をめくっていたら『漢律摭遺』も収録されていることを知ったんだけど(w

『漢律摭遺』は、まとまって残っていない漢代の法律の条文を収集し、考証・解説を加えたもの。網羅的なところなど、漢律を収集した類書の中では良書であるとの定評がある。

類書で優れたものは、
程樹徳『九朝律考』
かな。おそらくこの2書を見れば、漢代の文献資料から分かる法律のことは、ほぼ網羅されていると言ってもいいと思う。

ひとつ例を挙げてみよう。
p.1453に「殺傷人畜産」(他人の畜産を殺傷すること)という項目がある。

まず、『後漢書』第五倫伝の記事を引く。
「會稽俗多淫祀、好卜筮。民常以牛祭神、百姓財産以之困匱、其自食牛肉而不以薦祠者、發疾且死、先爲牛鳴。前後郡將莫敢禁。倫到官、移書屬縣、曉告百姓。其巫祝有依託鬼神詐怖愚民皆案論之、有妄屠牛者吏輒行罰。民初頗恐懼、或祝詛妄言、倫案之愈急、後遂斷絶、百姓以安。」
実際の引用文は上の文の前に「追拜會稽太守。」がある。ただ、『後漢書』の本文では、その間に、2,3句存在する。つまりよくあることだが、沈家本は、引用の際に適宜文章を省略している。

その次に、『風俗通』怪神篇の記事を引く。
「會稽俗多淫祀、第五倫到官、先禁絶之。掾吏皆諫、倫曰:『律、不得屠殺少齒。令鬼神有知、不妄飲食民間、使其無知、又何能禍人云云。』」
この引用文にも省略がある。最後の部分は点校者の誤りかもしれない。おそらく正しくは 又何能禍人』云云。」 あるいは 又何能禍人』」云云。 『風俗通』にあるのは、又何能禍人までで、後句が続いているので。

あえて訳さないが(笑)、最後の『風俗通』の第五倫の、
「律に、若い動物を屠殺してはいけない、とある」
という言葉から、(後)漢の「律」に、そういう条文があったが分かる。
また、後漢書に見える「管轄下の県に文書を送って」、シャーマンが鬼神にかこつけて民衆をだまし怖れさせた場合は「すべて処罰の対象とし」「みだりに牛を殺した場合、官吏が処罰する」という行為も法律に基づいて行ったわけだ。

この記事のあとに、沈家本の按語がついている。唐律と比較し、その他の事例から、「牛に限ったことではない」ことを指摘している(また若い動物にも限らないこともニュアンスから理解できる)。だから、冒頭の項目は「殺傷人畜産」となっているのだ。

ところで、漢代の出土文字資料である簡牘にも、律の文章が残っている。程樹徳や沈家本が見られなかったものなので、従来知られてなかったものもある。

たとえば、「畜産同士が殺し合った場合」について、とか。

敦煌漢簡(シャバンヌ494)に、
「言律曰畜産相賊殺 參分償和令少仲出錢三千及死馬骨肉付循請平」
言うに、律に曰く、畜産の相(あい)賊殺するは、参分して償して和せよ、と。少仲をして銭三千及び死馬の骨肉を出ださしめ、循に付して平を請いて・・・
とある。

死んだ畜産、この場合は馬の価値の三分の一を償って和解とする、というのが漢代の法律だったことが分かる。

面白いのは、「死んだ馬」の骨・肉も(おそらく持ち主の)循に与えられていることかな。トルファン文書に、官が保有する馬が死んだ場合、皮は政府に納める義務があるが、たしか肉については使用していた者のものとしてよい、というのがあったような・・・。


さて、明日は魏晋南北朝史研究会の大会だー。

<予告>
人は死んだらどうなるか? 後漢~魏晋の幽霊存在論争
について、ごく簡単に書きます(w (予定)
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