fc2ブログ

古代中国箚記

古代中国の文章・文物・歴史・研究について。とりあえず漢文(古典漢語)や漢字について徒然なるままに、また学会覚書、購書記録なども記していきます。

浦島太郎とはこのことか・・・(古代中国語の音韻と『詩経』の翻訳)

4年ほどブログを放置し、研究会にも5年ほど前に出たっきり、すっかり「研究の場」から遠ざかってしまいました。

理由はひとつではありませんが、「お金」の問題があることは否定できません。要するに、特に文系は学問だけしていても、お金にはならない(=生活できない)ので、現実世界でなんとか収入を得なければと校正や編集の仕事を増やしたからでした。

「研究の場」にいないと、いろんな情報から遠ざかってしまうものです。今日、こんな本が出ていることを知りました。

カールグレンと数人の中国人研究者を除き、研究されてないものだと思ってましたが、当然のことながら知らないところで研究は進んでいました。

 ウィリアム・H. バクスター『古代中国語音韻学ハンドブック』きこ書房、2014年

 ハンドブックといいながら、この本は1113ページもある、大著です。7334円也。

 handbookは、OEDOxford English Dictionary)に、
 

A small book or treatise, such as may conveniently be held in the hand; a manual.

 とあるように、本来の意味は「手でつかめむにちょうどよいくらいの書籍/専門書のこと」なので、ちょっと違和感があります。
 とはいえ、原著者の「ほんのハンドブックにすぎないけれど、これほどの厚さになってしまったよ」感が伝わってきます。ページ数からしても、扱う内容が専門的なことからしても、良心的な値段なのでしょう。
けれど、やはり高いと思ってしまう。
原書を買った方が安いはずと思って、見てみたら、なんと$547.88 (約6万2491円)。。。

絶対手が出ないわ。
まして、専門じゃないしw

でも、大学図書館などには入れて欲しい一冊です。と、思って出講先の大学図書館のOPACで調べたら、ありました。ありがたい。来週にでも借りにいこう。

また、こんな時に、amazonの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」的な、いつもならうぜーよと思う機能がありがたいです。芋づる的に、ここで紹介していない本をいくつか紹介しておきましょう。

松丸道雄『甲骨文の話』大修館、2017年。
いわずとしれた、甲骨文字・殷代史の大家、松丸先生の本です。ちょっと内容紹介をみてみると、

松丸道雄先生の六十余年にわたる甲骨学研究のエッセンスが読みやすい形で新たな一冊に! 若き日の論文「甲骨文略説」、壮大な歴史研究「殷人の観念世界」、「十二支の「巳」をめぐる奇妙な問題」、書き下ろし「『甲骨文合集』の刊行とその後の研究」など11本の論考・講演録を収録。甲骨文字発見から百二十年のいま改めて、漢字の源流、甲骨文字の世界を味わえる一冊。(amazonより)

とあるので、いろいろな話・文章が収録されているとのこと。これはこれで面白そうです。

ついでに『詩経』はさまざまな訳が出ていますが、間違っても目加田誠訳なんていうものは買ってはいけません。『詩経』にかぎっていえば、基本的に中国文学者の訳は、歴史的な背景をほとんど顧みない翻訳です。
『詩経』に10首余り出てくる、恋愛などの男女関係を中心に講義で話すことがあり、『詩経』の翻訳を比較検討したことがあります。

基本としたのは、以下にリンクを貼った白川静訳でした。もちろん、白川訳がベストというわけでもありません。その際に参考にしたのは、牧角悦子『詩経・楚辞』(角川ソフィア文庫)、角川書店、2014年でした。この本で翻訳された『詩経』のうたは、なかなか鋭い指摘や深い理解と的確な訳語を用いており、非常に興味深く、また検討に値する翻訳でした。


何か1冊を、と言われた時、私は牧角訳の『詩経』を薦めています。
スポンサーサイト



次のページ