![]() | 冨谷至 『四字熟語の中国史』 岩波書店、2012年。 |
もっとも、今検索してみたら、同じような本がすでに出ていた。
![]() | 塚本 青史 『四字熟語で愉しむ中国史』 PHP研究所、2010年。 |
こちらは作家さんの書籍。
ん、ていうことは、この2冊をタネ本に使わせていただいて講義ができるということか・・・。とはいえ、多くの学生にとって四字熟語は、初めて聞くものになるのだろうから、学生の身近なところから東洋史や中国史を概説するというのは、学生にとってそれほどやさしいものではないかもしれない。
他の講義でも「人口に膾炙する」とか「羹に懲りて膾を吹く」という成語で中国文化を紹介することがあるのだが、知っているかどうか学生に聞くと、毎年9割の学生は知らないとこたえる。では、自分自身はどうであったか考えてみると、たしかに大学時代に知っていたかどうかは実に微妙で、いつの間にか知っていたというのが正直なところ。もっとも、自分は大学時代から中国史専攻だったので、そういう言葉もわりあい知っていた方だとは思うが、今、私が教えている女子大では文学部はあるけれども、歴史の学科はなく、また正直なところレベルが高いというわけではない。
そうすると、いよいよ何をもって概説すればいいのか分からなくなるのだが、通史というのはえらい先生になって初めて独自なものが書けるのであって(と、少なくとも私が学部生時代はそういうことになっていた)、現在の自分に腹案がないからといってそれほど落胆すべきことでもないかもしれない。ただし、やはり学生は「東洋史概説」を受講するのであって、こちらはそれ相応の講義をしなければいけないのは自明のことだろう。
私が学部生の頃は、「西洋史概説」とか「東洋史概説」とはいうものの、その実、担当する教授が専門とする国だったり時代だったりの概説だったりした。つまり「ドイツ近現代史」だったり「バルカン半島近現代史」だったり「明清史」だったりしたものだが、今日ではそういうのはあまり通用しないに違いない。
そう思うと、学部生の頃に受講した「中国古代哲学概説」とかは実に立派な概説だったなと改めて思う。内容はどういうものだったかというと、文字通りの「概説」で、専門外からはつまらないかもしれないが、古きから新しきにいたるまで、諸子百家や古学から新学までカバーしていたあの講義は、その名の通り「概説」であった。原文を引用・紹介しながら学説の特徴にまで説き及ぶあの講義は一見地味に見えて、なかなか難しかったに違いない。
ということは、実直にひたすら「概説」をしていけばよいということになるが、かといって、「東洋史」が扱う地域はあまりにも広すぎて(つまり西洋とアフリカ・アメリカ以外のすべてであるから)、時間的にも能力的にも(やはりイスラム世界はよく分からない)とても年間30回の講義ではカバーしきれないのである。
ということで、毎年悩みながらも、初年度になんとかひねり出した講義案を使って、おそらく来年度も講義することになるだろう。中央アジア~古代東アジア世界の交流と国家・社会をテーマに、カラー図版を多用して講義をしている。イスラムとインド・インドネシア世界は関係する事柄だけ逐次紹介・説明しているが、歴史や社会構造の話は割愛させてもらっている。毎年マイナーチェンジをしてはいるものの、大きく変えることはなかなかできずにいる。
<2011.2.27追記>
mujinさん、ご指摘ありがとうございました。記事、訂正いたしました。まったくもってお恥ずかしい限りです^^;
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テーマ:中国史 - ジャンル:学問・文化・芸術