古文、漢文、漢字@2ch掲示板の「二畳庵主人「漢文法基礎」復刊」スレッドの668にある。
http://kamome.2ch.net/test/read.cgi/kobun/1286947499/
ちなみに最近、
![]() | 古田島 洋介、湯城 吉信 『漢文訓読入門』 明治書院、2011年。 第一部 訓読の基礎 第二部 応用練習 第三部 発展練習 |
という本が出た。コメントで知らせてくれた人がいたので、図書館で借りて読んでみたが、率直な感想を言うと、個人的には「悪くない」しかし「良くもない」です。
「悪くない」のは、一応一通り、「漢文訓読」とは何か、ということが説明されていること。音読みには漢音を用いるとか、「置き字」にも意味があることとか、訓点(レ点とか一二点とか)の読み方などは説明してある。また古文の文法とは違う漢文独特の読みも提示してあるので、その点は親切である。さらに、漢文の訓読の文法は、平安時期の古文文法を基礎としているが、奈良時代のものもあれば、江戸時代のものもある。そうした点を区分けしてきちんと平易に説明しているのは、類書ではほとんど例がないと思う。
一番、分かりやすい例を挙げれば、仮定条件と確定条件の表現の仕方には、漢文訓読では二通りの読み方がある。平安時期(中古文法)では、仮定条件を「未然形+ば」で表し、確定条件を「已然形+ば」で表すが、江戸時代(近世文法)ではともに「已然形+ば」となる。
具体例がこの本には出ていないのだが、例えば、
「雨降らば」(雨が降ったとしたら・仮定条件・中古文法)
「雨降れば」(雨が降ったとしたら・仮定条件・近世文法)
となるのだ。
そして、この書では、
現行の訓読は、直接には近世後期の訓読を引き継いでいるため、順接仮定条件・順接確定条件のいずれをも〈已然形+「ば」〉で表すことが許容される。p.80
としている(確かにその通りである)。しかし、例文の一つも紹介していないのは、やや不親切に感じる。
こうした点に詳しいのが、私がお薦めしている、
![]() | 鈴木直治 『中国語と漢文―訓読の原則と漢語の特徴』 大修館、1975年。 (中国語研究学習双書〈12 監修:藤堂明保,香坂順一〉 |
である。
論語を例に白文をどのように漢文として訓読してきたかを詳しく紹介しており、非常に有益な本。また、漢文訓読がどのようにして成り立ったのかを知る、ほぼ唯一の本と言って過言ではない。私はこの書を読んで、目から鱗が落ちる思いを何度もした。この本が、『漢文訓読入門』の参考書に引かれていないのは、残念なことである。というより、2chの古文・漢文板でもほとんど見かけない。
『漢文訓読入門』を読めば白文ないし訓点付きの漢文が読めるかどうかと言えば、おそらく読めないと思う。また、なぜその漢文(白文)をそう読む(訓読する)のか、という解答はここにはない。僅か147頁の本にそれを求めるのは酷と言えるだろう。高校~センター試験の漢文訓読を学ぶにはふさわしいが、それ以上をこの書に求めてはいけない。しかし、初級段階での練習問題を載せているので、「とりあえず手始めに何か1冊…」というのであれば、この書はなかなかいい「入門書」だと言える。
スポンサーサイト
テーマ:中国古典(漢文) - ジャンル:学問・文化・芸術