ほとんどの人が「くずし字」などの語彙で検索サイトから飛んでくる方々なのだが、あらためてここを訪れる皆さんに感謝いたします。
最近は、大学の講義に奔走している毎日です。2年目で前年にやった教案があるのですが、やはり予習は欠かせないですね・・・。
漢文訓読のゼミであればちょっとした予習で済むと思うのですが、講義となると90分話す内容となるので、意外に時間がかかります。他に学生の自主的な希望により『三国志』の原文講読を1時間ばかり学生の有志を募ってやっています。こちらは予習なしのぶっつけ本番でも平気です(笑)。
しかも昨年は3種類の講義案を一気に作りあげたので、今年見てみると穴ばかり目立ってしまいます。
また、ある大学の専任の方と話す懇談会があり、それに参加してきたのですが、その大学での
新入生の教育レベルがどこにあるのか、正しく認識することができました。
曰く、
「学生は音読みと訓読みの違いを知らない」
「常用漢字を音読みできない」
「長江と黄河の位置を正しく答えられた学生は1割…」
などなど。
そのため、その大学での1年生対象の基礎科目で常用漢字の音訓を徹底的に覚えさせるのだそうです。
ちなみに、その大学は特に成績が悪い大学ではなく、中の中といったレベルの大学です。
それにしても「学生は音読みと訓読みの違いを知らない」「常用漢字を音読みできない」
というのは致命的です。つまりは新聞をろくに読めない、ということであり、中国史・東洋史を勉強する素地がない、と言っても過言ではないでしょう。
その中で東洋史の概説などを担当していますが、甲骨文や金文の内容まで踏み込んで、殷代・周代の歴史、社会構造を解説するところから始めています。去年の学生の感想で「とにかく詰め込みだった」というのがあり、今年の学生の感想には「むずい」あるいは、「難しい漢字には板書でフリガナをつけてほしい」というのがありましたが、宜なるかな、常用漢字すらおぼつかないのであれば・・・。
しかし、高校の世界史で出てくる単語にもフリガナをつけなければならないのは、ちょっと釈然としないというか、授業を聞いていれば自分でフリガナをつけられると思うのですが・・・。
もっとも原史料を紹介するというのは一部の学生の好奇心を刺激するようで、「生の青銅器を見てみたい」とか「分かりそうで分からない金文に興味が湧いた」という感想もありました。
また、他の講義ではカラーの資料で中国古代の風俗・習慣を紹介しているのですが、細かなところまで観察して、こちらが思いもしなかった指摘をしてくれる学生もいます。画像磚石や唐代くらいまでの壁画を主な資料にしていますが、こちらはまず画像が掲載されている書籍を探すのにまず一苦労、そしてそれをスキャンして取り込むのにまた一苦労と非常に時間がかかって昨年は苦労しましたし、今年もその補足で同様の作業をしています。
会社員をしている友人に少しそういった話をすると、「もらっている給料にみあった労働をしたほうがいいよ」と大人な、そして的を射た発言をもらうのですが、学生に少しでも中国というものに対して興味を持って欲しいのと、何より自分がやっていて楽しくないといやなので、ついつい時間を割いてしまいます。
そんな訳で、駆け出しの2年目の大学講師は、学生のレベルに合わせつつも、できるだけ古代中国を体感してもらいたいと日夜努力を続けています(笑)。
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テーマ:研究者の生活 - ジャンル:学問・文化・芸術