中国古代の戦争や武器・兵器さらには、戦争の形態・実態については、実は意外と知られていない。
出土文物から兵器の形態の変遷を丁寧に跡づけた研究は、林巳奈夫や楊泓のものがある。
1.
林巳奈夫『中国殷周時代の武器』京都大学人文科学研究所、1972年
2.
楊泓(来村多加史訳)『中国古兵器論叢』関西大学出版部、1985年
とはいえ、この2書は、あまり日本に蔵書がない。1.は大学図書館にはあるだろう。
一般向けには、
3.
『戦略戦術兵器事典 1 中国古代編』学研プラス、1994年
があり、やや古いものの、丁寧かつ知りたい情報がつまっている。
4.
篠田耕一『武器と防具〈中国編〉』新紀元社、1992年
は、武器と防具それぞれの通史的解説で、内容がやや散漫でイラストのレベルが高くないが、巻末の参考文献リストは非常に有用なので、おさえておきたい。
だいたい、あまりきちんとした学問的裏付けがない概説書がまかり通っている感じの分野ではあったが、近年、すばらしい研究成果が出た。日本語でも読めるもので、値段ややや高いがぜひ参考にしてもらいたい、まず参考にお勧めする書籍が登場したと言っていいだろう。
今村佳子(訳)『中国文化財図鑑 第3巻 兵器』科学出版社東京、2015年
中国考古学を専門に研究をしている訳者ならではの、理解しやすい用語、解説があり、まず第一に薦められる書籍がようやく出たという感じ(もちろん、この書の中国語版は以前よりあったので、中国語が読める方はそちらをどうぞ)。
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一般の人には馴染みが薄いかもしれないが、「唐宋変革」という言葉があり、中国史を勉強している人であれば、必ずと言っていいほど、耳にする言葉です。唐代と宋代では大きな質的な変化があり、それを「変革」と呼んでいます。この論は、古くは内藤湖南から始まるものですが、いわゆる京都学派だけでなく、歴研学派(東京学派)にも共通した(どのような世界からどのようなへ変革したかは別として)認識です。本当におおまかに言えば、京都学派は、これを中世から近世への変革と見るのに対し、歴研学派では、これを古代から中世への変革と見るわけですが、いずれにせよ、唐代と宋代には大きな変化が見られるという点では一致しています。
年の瀬になりましたが、京都学派の礪波先生が以下の本を出されました。文庫本でどちらかと言えば硬派なものが出るのは珍しく、ぜひとも手元に置いておきたい本です。
つい先日も、宮崎市定先生の中公文庫の本を紹介しましたが、なかでも専門書を文庫本化した下記の書は、版元品切れのようですが、文庫本で入手できること自体、驚きです。それまでハードカバーの本は古本屋で1万円以上していましたが、この文庫本が出てから、一気に底値が下がりました。今年は、加地伸行『漢文法の基礎』が絶版かつ古本としての流通もない状態から、講談社学術文庫から出版されましたが、今後もそういう流れが続いてほしいものです。
個人的には、
の再版か、文庫本化を強く希望しますが、1982年に亡くなられていますから、著作権の関係などあり、いろいろ難しいのでしょうね。良書が世に出ないというのは、本当に嘆かわしいことです。
最近、ある出版社から依頼されて、高校卒業生向けの漢文の問題を作成したのですが、世に出ている漢文参考書のほとんどが句形と助字の説明に終始しているのに対し、『漢文の語法』は、比較的網羅的に「漢文」の文法的構造を平易に説いています。非常に参考になりました。また、以前紹介した
では、「すでに入門としてはレベルが高すぎる」という評価をされましたが、やはり、
が、現在入手可能な、入門から中級レベルの非常によくできた漢文教科書であることは、変わらないようです。また、漢文の文法については、書店で売っている参考書コーナーにある本よりも、
の付録の、「漢文読解の基礎」が、よっぽど非常に簡潔にかつ正確に記述しています。
最近は、どうも「分かりやすければよい」という風潮があるように思いますが、少々とっつきにくくても、読めば読むほど理解が深まるものを読むべきで、いくら読んでも理解の程度が深まらない本を「分かりやすい」からといって読むべきではないと思います。あるいは、そうした「分かりやすい」本を読んだら、次のステージに迷わず進むべきでしょう。「分かりやすい」本は、それを読んだとしても、そこから得られる知識は限られています(もっと言えば、浅い理解しかできない)。それにひきかえ、少々難しい本でも、なんとかして読めば、より一層の理解が得られるのです。
いくつか前のブログに、どうすれば古典漢語が読めるようになるだろうか、と自問しましたが、やはり答えは「良書を読むこと」と「漢文を読むこと(いわゆるセンター試験のように訓点つきでないものを読むこと)」に限るのだと、思い至りました。
学問に王道はないので、古典漢語も、外国語ですから、読めば読むほど読めるようになるし、つまり、漢文そのものを読まなければ、いくら解説書を読んでも、いつまでも読めないと思います。それは、語学を勉強するには、「多听,多念,多说」が一番だということに他なりません。
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今日、別件で出典の調べ物をしていたら、偶然遭遇。以前このブログでもお知らせしたように、日本の東洋史研究では超メジャーどころか、老舗であり権威的でありスタンダードでもある、
『東洋史研究』が、京都大学のリポジトリに加わっていました。
しかもなんと最近の3年間を除き、全部公開しちゃってます。こりゃ、事件ですよ、姉さん(笑)。
<2011.7.4補記>
よくよく見てみたら、まだ部分的にしかPDF化されていませんでした。「全部」などと言ってしまい、すみません(ツイッターでの反響も大きかった)。著作権は著者に帰属しているでしょうから、許諾などで時間がかかるのかもしれませんが、学界をリードする学会誌なので、頑張ってほしいところです。
現段階でPDF化されているのは、以下の通り。
1巻1号~14巻4号・26巻1号・26巻3号・63巻1号~66巻4号。
<補記終>今や全国的な学会ですが、もとはといえば(あるいは現在も?)京都大学の東洋史研究室(東洋史研究会)の雑誌だから、大学のリポジトリで公開するというのは当然といえば当然かもしれない。
これのすぐれているところは検索機能がついていることでしょう!
論文名だけではなく、おそらくテキストもひっかかるようです。
みなさん、興味あるものはPDFで落として読みましょう!
(もちろん、学術目的に限っての利用です)
すばらしい、京大!
・京都大学学術リポジトリKURENAI紅・東洋史研究http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/138102負けるな、『東方学』『東洋学報』!!(笑)
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今年度はわけあって、高校で「世界史B」を教えている。
実は、世界史を教えるのは5年ぶり…。5年前は「世界史A」を教えていたので、「世界史B」となると、12年ぶりくらいです。10年一昔とはよく言いますが、教科書もまた少しずつですが、変わってきています。使っている教科書は、もちろん天下の山川出版社のものです。
先日、モンゴルのところを教えていたのですが、予習段階で教科書に
「オゴタイ=ハン国」が出ていないことに気付きました。
チャガタイ=ハン国、イル=ハン国、キプチャク=ハン国は、ちゃんと太字になっているのにもかかわらず。
おかしいなぁと思い、資料集を見てみると、
「オゴタイ=ハン国は、近年の研究から存在が疑問視されている」と出ていました。
初耳です(笑)。時代が違うから知らないということもあるのでしょうが、オゴタイ=ハン国の研究ってそんなにされていないような気がするのですが。まぁ、山川の世界史に出ていないということは、信憑性高そうです。
他にも、自分が習った時、あるいは10数年前教えた時と違っているところがいくつかあります。
たとえば、
「テニスコートの誓い」高校生のころは、なんだその誓いって、と思ったものでした。さすがに、そう思う人が多かったのか、今の教科書では、
「球戯場(テニスコート)の誓い」となっていました。
あと、自分が習った時にはなかった語句が太字になっていて、初めて見る語句も少しあります。気付いた時に、ここに追記していきたいと思います。
<追記・2010/11/25>昨日、この記事の話題を仕事仲間と話していたときに、衝撃の事実(?)が発覚。
「テニスコートの誓い」って野外ではなくて、室内で行われたんだそうです。
知ってましたか?私は知りませんでした。。。まだまだ勉強が足りません。精進せねば。
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