誰もが知っている(というわけではないが、)某巨大匿名掲示板に、我がサイトのリンクが貼られていた。2週間くらい前に気がついたのだが、コメント(管理人だけが閲覧可能)で教えてくれた方がいた。ありがとうございます。ちなみに自作自演ではありません(笑)。
古文、漢文、漢字@2ch掲示板の「二畳庵主人「漢文法基礎」復刊」スレッドの668にある。
http://kamome.2ch.net/test/read.cgi/kobun/1286947499/ちなみに最近、
という本が出た。コメントで知らせてくれた人がいたので、図書館で借りて読んでみたが、率直な感想を言うと、個人的には「悪くない」しかし「良くもない」です。
「悪くない」のは、一応一通り、「漢文訓読」とは何か、ということが説明されていること。音読みには漢音を用いるとか、「置き字」にも意味があることとか、訓点(レ点とか一二点とか)の読み方などは説明してある。また古文の文法とは違う漢文独特の読みも提示してあるので、その点は親切である。さらに、漢文の訓読の文法は、平安時期の古文文法を基礎としているが、奈良時代のものもあれば、江戸時代のものもある。そうした点を区分けしてきちんと平易に説明しているのは、類書ではほとんど例がないと思う。
一番、分かりやすい例を挙げれば、仮定条件と確定条件の表現の仕方には、漢文訓読では二通りの読み方がある。平安時期(中古文法)では、仮定条件を「未然形+ば」で表し、確定条件を「已然形+ば」で表すが、江戸時代(近世文法)ではともに「已然形+ば」となる。
具体例がこの本には出ていないのだが、例えば、
「雨降らば」(雨が降ったとしたら・仮定条件・中古文法)
「雨降れば」(雨が降ったとしたら・仮定条件・近世文法)
となるのだ。
そして、この書では、
現行の訓読は、直接には近世後期の訓読を引き継いでいるため、順接仮定条件・順接確定条件のいずれをも〈已然形+「ば」〉で表すことが許容される。p.80
としている(確かにその通りである)。しかし、例文の一つも紹介していないのは、やや不親切に感じる。
こうした点に詳しいのが、私がお薦めしている、
である。
論語を例に白文をどのように漢文として訓読してきたかを詳しく紹介しており、非常に有益な本。また、漢文訓読がどのようにして成り立ったのかを知る、ほぼ唯一の本と言って過言ではない。私はこの書を読んで、目から鱗が落ちる思いを何度もした。この本が、『漢文訓読入門』の参考書に引かれていないのは、残念なことである。というより、2chの古文・漢文板でもほとんど見かけない。
『漢文訓読入門』を読めば白文ないし訓点付きの漢文が読めるかどうかと言えば、おそらく読めないと思う。また、なぜその漢文(白文)をそう読む(訓読する)のか、という解答はここにはない。僅か147頁の本にそれを求めるのは酷と言えるだろう。高校~センター試験の漢文訓読を学ぶにはふさわしいが、それ以上をこの書に求めてはいけない。しかし、初級段階での練習問題を載せているので、「とりあえず
手始めに何か1冊…」というのであれば、この書はなかなかいい「入門書」だと言える。
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今年度は、都内某所(2箇所)で中国語を教えているのだが、そのうち1箇所で学生から「先生、漢文が読めるようになるにはどうすればいいですか?(大学の)試験で漢文が出るんです」と言われた。
その学生は、高校3年間を台湾で過ごし、大学3年まで北京にいたので、いわゆる「漢文訓読法」とは無縁で、むしろ訓読法を一から勉強するのだったら、現代中国語から直接、古典漢語を読めるような訓練をした方が早いかもしれないのだ。
もちろん、中国で普通に大学生活を送っている学生は、古典漢語を読めるわけではない。私たちが普通に『源氏物語』や『枕草子』がなんとなく意味が分かるような気がしていてもきちんと現代語訳できないのと同じように。
なので、中国人のための古典漢語のテキストも存在している。
そうしたテキストでスタンダードなのは、王力『古代漢語』(全4冊)、中華書局。このテキストは非常によくできていて、これをみっちりやれば相当古典漢語が読めるようになると思う。
しかしながら、日本の訓読法による古典漢語の読解も捨てがたい。いわゆる置き字とされる助字や再読文字などの意味を正確に把握することができれば、訓読法はスタンダードな古典漢語に対しては、かなり正確に意味を把握することができる。とはいうものの、一から「漢文」を勉強する人にとってはどんな本が適しているのだろう。
「漢文」が大学の受験科目に指定されている場合、その問題文のほとんどが、訓点や返り点などが付されたものだ。つまり、漢字の音読み・訓読みができれば、送り仮名が振ってあるから、なんの問題もなく読むことができる。そして一部分だけ、訓点がつけられておらず、「ここの部分を書き下せ」などという問題が出されるのだ。
こうした「漢文」を相手にする場合は、「白文」を相手にする場合と違って、問題になっている箇所以外の訓読については全く検討する意味をなさない。いわば正解がすでにつけられているからである。
かくして「漢文」参考書や問題集、文法書(と銘打っているもの)は、いかにして正しい訓読をすべきか、練習させる。多くは、訓読を暗記させる方法で。私自身、漢文訓読法で古典漢語を読んできたので、訓読法を否定する気にはなれない。しかし、世の漢文参考書で「句法」解説書の多いことには辟易する。「文法」を論じているのではなく、「句法」(定型の訓読法)を説明しているにすぎないので、結局は暗記しないといけない、という結論に至るのである。
むろん、「古典漢語」を翻訳するためには、一定の知識は暗記しなければならないだろうが、上のような学習をしたとして、はたして「白文」が読めるようになるのだろうか。「句法」の読み方だけはできていたとしても、それだけでは「白文」は読めるようにはなるまい。
やはり、「文法」の理解が必須になると、私は思う。
古典漢語に文法はあったのか。現代中国語に文法はあるのか。答えはもちろん諾である。英語文法のようなものではないにしろ、中国語には中国語の構造・法則・「文法」はあるのだ。
では、その「文法」を解説した本があるか、というと、これがなかなか難しい・・・。
いろいろ悩んでいるうちに、学生への答えが出ないまま、今日も中国語を教えに行かなければいけない時間になってしまった。いくつか、コメントを寄せて頂いている方に返事が書けずにいて申し訳ないのだが、しばらく待っていただきたい。
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中国古代の文字と記録媒体(メディア)
2011年度 東洋文化研究所主催 東洋文化講座
・第77回 9/20(火)17:45開場・18:00開演(~20:00)学習院大学中央教育研究棟401号室
冨谷至(京都大学人文科学研究所教授)
「中国史上最長で最強の王朝漢、その存続理由-簡牘と文書行政」
・第78回 10/7(金)17:45開場・18:00開演(~20:00)学習院大学中央教育研究棟402号室
窪添慶文(立正大学文学部教授)
「石に刻まれた生涯」
・第79回 10/20(木)17:45開場・18:00開演(~20:00)学習院大学中央教育研究棟402号室
關尾史郎(新潟大学人文学部教授)
「木と紙のあいだ」
挨拶:岡孝(東洋文化研究所)
コーディネーター:李正勲(東洋文化研究所助教)・堀内淳一(東洋文化研究所助教)
協力研究員:村松弘一(東洋文化研究所准教授)
主催:学習院大学東洋文化研究所
〒171-8588 豊島区目白1-5-1(学習院大学内北1号室4階)
TEL:03-3986-0222(内線6360)
E-mail:ori-off@gakushuin.ac.jp
これはなかなか聞きがいのありそうな企画・講演。告知ポスターで知る。
ホームページ(
http://www.gakushuin.ac.jp/univ/rioc/lecture/index.html)を見ると、
「事前申込不要・入場無料」と書いてあった。サラリーマンにもありがたい時間帯。といっても、私はこの時間帯も授業があるのだが・・・。
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今日、漢文の試験を受けてきた。何の試験かは内緒です(笑)。
大問が3つあり、2つは、2つの白文(読点・句点もなし)の文の、一部分の書き下しと訳をさせるものだった。これは、たぶん8割~9割くらいはとれているかと。1つはたぶん『世説新語』、もう1つは明代の筆記かなにかだった。
しかし、・・・、大問3は「李白の任意の詩を記し、それについて論ぜよ」というもの。
ごめんなさい、李白で暗誦している詩はないです(泣)。いや、そもそも暗記している漢詩なんてたぶんない。。。
しょうがないので、李白の詩の特徴を杜甫と比べたりして、適当に書きました。
この試験の結果は、8月上旬に分かるが、果たしてどのようなものになるか。。。
一応、試験対策で、漢文の問題集を何冊か買ったので、ちょっとしたレビューもかねて紹介しておきます。ちなみに
「センター試験対策」モノは、はっきり言って漢文を読む力がつきません。そのほとんどが、「これさえ覚えれば、満点がとれる」とか「こういうのが頻繁に出るから覚えるべし」といった類のもので、しかも練習問題は選択問題なので、高校の漢文を真面目に受けた人であれば、忘れたものを思い出す程度のレベルです。
それ以上のレベルとなると、実はそれほど受験参考書や受験用問題集は出ていない模様。
 | 仁田峠公人 『最強の漢文 難関大をめざす』 (2006/09/13) Z会、2006年。
2次・私大の入試から厳選した25題で、記述問題にも対応できる実力を養成。設問パターン別の解法も提示しています。記述問題には、詳しい採点基準を掲載。自分の解答の弱点を把握することができます。これ1冊で、難関大突破に必要な句法や基本重要語をマスター。一歩踏み込んだ読解が可能になる、漢文の「背景知識」も収録。 |
これはなかなかよかったです。問題を解いていって、解説がなされるというパターンの第二編が主要な内容だが、「第1章 戦略編」は、「漢文とは何か」から始まり、解釈の方法や書き下しの際の問題点など、「古代漢語」としての「漢文」の位置づけがなされ、受験でどのような点が問われるか、日本語として翻訳するときの注意点などが記されています。巻末には「基本句形一覧」「基本重要語一覧」があり、一通りの再読文字や同訓異義語などの解説もあります。1冊熟読すれば、けっこう力がつくと思います。
ただし、漢詩については1問しかないので、ちょっとその点は物足りないかもしれない(それだけ出題されない、ということなのかもしれない)。
 | 三宅崇広 『難関大突破 新漢文問題集 駿台文庫、2010年。
毎年のように入試で出題されている入試漢文の定番問題15問と、近年の入試漢文の傾向を反映した問題を精選した実戦問題10問を収録。 |
これは、過去問15問とその解説、さらに実戦問題10問とその解説、で成り立っている問題集。
問題集と銘打っているだけに、漢文の説明自体を説明した単独のページはありません。さらに、実戦問題の10問は過去問15問より比較的簡単なので、過去問15問→実戦問題10問という並びなので、実戦問題がやさしく感じられます。逆に言うと、「実戦問題」になっていないかも。
次に河合塾から2冊。
 | 天野成之・三森一彦・吉野大作 『得点奪取 漢文 記述対策』 河合出版、2004年。
二次(一部の私大)対策を希望する受験生が対象を対象とした問題集。記述の基本に従い、漢文の各ジャンルの問題を解説。問題文を正確に捉える読解力・設問パターン別対策と解答作成の要点を記載。実例答案・採点基準付き。
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この問題集の特長は、解答例を添削していたり、「採点基準」が出ていることでしょうか。けっこう細かく書かれているので、こういう風に採点されるのか、というのを知るには一番いい問題集だと思います。
初めの「第一部 典型問題篇」では、やややさしい漢文が問題とともに解説されています。そこで基礎を築いてから「第二部 練習問題篇」11問をやる構成に。易しい→難しいというように、問題が並べてあるので、なかなか実践的です。問題集としてはこれ1冊でセンター二次試験・私立大学の記述式に対応できるでしょうね。
 | 河合塾国語科 『漢文 入試精選問題集9』 河合出版、2003年。
大学入試問題30題を精選掲載。問題は易しいものから難しいものへと並べている。解答・解説篇は、問題についての解答、本文解説、書き下し文、全文解釈、解釈のポイント、設問解説からなっている。 |
改訂版なのですが、ちょっと古めですね。でも、記述式の漢文問題が30問もあるので、なかなか解きがいがあります。だいたいの問題が、選択肢+最後の1問は記述式、という感じです。実力を試すとかいろんな問題を解きたい場合は、これがあると便利。問題のレベルもそれなりなので、問題集としてはなかなかいいんじゃないでしょうか。
あと、参考書と問題集の中間くらいに位置するものとして、次の本がなかなかボリュームがあり、勉強のしがいがある。「ハイレベルな入門書」とはこれいかに?という感じですが、要するに全体の説明なしに、いきなり例題を解くことから出発して、最後には過去問題を解くという仕組み。
 | 片桐功雄 『難関大突破 究める漢文』 中経出版、2010年。
基礎レベル習得済みの学習者を難関大合格レベルまで引き上げる“ハイレベル入門書”。「単語の読み・意味問題」「解釈・書き下し文問題」「理由・心情などの説明問題」など高頻度の出題形式をあまねくカバーすると同時に、“文章ジャンル別の展開パターン”や、“漢文の背景知識”など、高度だけどマニアックではないテーマを多数収録。 |
この本、他の本と違い、問題篇と解説篇が別々になっておらず、赤いシートで答えを隠して解いてみるというやつ。なので、ちょっと不便を感じてしまう。しかし、豊富に過去問題を出しているので、やりがいがある。
ちなみに代々木ゼミナールで記述式の漢文対策の本が出てないか、調べたのですが、amazonとかではひっかからず。。。テキストはあると思うんですけどねぇ。
そんなわけで、受験用の記述式対策の漢文問題集を紹介しました。参考書はあんまりいいものはないけど、個人的にはちょっと古いけど、中野清さんのを推薦しています。一昔前はけっこう入手困難でしたが、今では多少手に入るようです。
中野氏の参考書を推す理由は、漢文を「古典漢語」としてとらえていて、解釈の随処にその理解が活かされているところ。解説には、ちょっといただけない部分(左翼的な発言など)もあるが、従来の漢文参考書が句形の説明に終始しているだけなのに対し、品詞で分析的にとらえているところがいい。このテキストの題材にしている漢文は、読んでいて面白いので、その点もオススメ。
世界史の問題集を買いに書店に寄ったら、たまたま目に入ったのが以下の漢文入門書。
パラパラ見てみたが、なかなかいいでき。例によって数多く存在する漢文入門書と同様に、漢文法ではなく「句法」解説がメインだが、入門者、センター受験のためであればこれもありだなという感じ。
 | 三国志で攻略!センター漢文12 (大学JUKEN新書) 旺文社、2009年
「三国志」の名場面を取り上げて、原文で読み解きながら、漢文のさまざまな知識を身につける。書き下し文と小説風の口語訳を付記。12の読解ポイントで、センター漢文を攻略。厳選された50の句形を簡潔に解説。 |
それにしても、この帯がすごい。
「あのレッドクリフで映画化した『三国志』でセンター漢文を攻略!!」とある。
上の本は句法を中心に短文を読むためのもので、題材を『三国志』にとっている。次の本は以前紹介したこともあるが、『三国志』中の比較的長い文章を取りあげ、段階的に難易度をあげていく(最初は訓点をつけているが、後のほうでは句読点のみ)という参考書。
 | 三国志学会 三国志―漢文講読テキスト 白帝社、2008年
『三国志』の「魏志」「蜀志」「呉志」から、三国時代の歴史の流れが分かるよう、古来日本でよく読まれてきた文章を中心に、陳寿の本文だけを取りあげたテキスト。各項は、段階を追って学習できるように、導入文、句点文、訓読文、書き下し文、語釈、現代日本語訳で構成されている。宋の紹興・紹煕の二種の刻本を組み合わせて影印した「百衲本」を底本とし、盧弼『三国志集解』、中華書局標点本『三国志』により校勘を行った。 |
実はこの本を使って、学生と古典漢語の自主演習をしたことがあるが、使ってみた感想は、意外とすぐに中級レベルになってしまう、ということ。まぁ、陳寿『三国志』を題材にしているから当たり前と言えば当たり前。魏晋から出てくる語法も散見するが、歴史研究者が編纂したものなので、語法面での解説にやや物足りなさを感じた。中級者のための教材といった感じだ。
個人的に漢文の勉強法でお薦めなのが、岩波文庫で出ている『孟子』とか『荘子』とか『韓非子』(いずれも説話が多いので楽しめる)とかで、まず「原文」を見て、自分で書き下して、それを「書き下し」で確認し、答え合わせし、現代語としての意味を考えて、それをまた「現代語訳」で確認するというもの。漢文を白文(句読点はついているが、レ点などはなし)で読むにはうってつけ。大学時代に通学電車内でよくやってました。演習で『韓非子』を読んだりもしたし。ちなみに『老子』や『易経』はこの方法はお薦めできない。かなり独自の用字法というか、独特な文章だから、歯が立たないのだ。
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